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●SPS(補足)飼育ガイド●

本ガイドは好日性サンゴ飼育ガイドの内容を前提にしてミドリイシなどSPS類の飼育に補足的な内容を補足する形で記載しております。

以前まで(好日性)サンゴ各種飼育図鑑のSPS類の”全体的なこと”に記述しておりました補足の解説に大幅に加筆したものです。

初期掲載:2014年4月13日 最終更新日:2015年11月14日

●索引●

●他の好日性サンゴ(LPS)との違い

●飼育方式の検討

 ・まずSPSだけを重視した飼育方針を

 ・目指すべき水質 

 ・カルシウムリアクターは用いた方がいい

 ・システムの選択 ベルリン式と通常のろ過との差異 

 ・各飼育方法でのミドリイシ成長試験 

●照明について

 ・光と褐虫藻と栄養塩の関係

 ・照明はLEDスポットライトがお薦め

 ・照明の距離・設置など

 ・必要数の目安

●適正な水流 

 ・水流用パワーヘッド と 普通のパワーヘッドの違い

●同じ水槽で飼育する他の生物

●その他

 水量は多い方が良い

●当店流の飼育方法の紹介・プロテインスキマーなしで飼育する方法

 ・プロテインスキマーを用いなくてもリン酸をごく低濃度にできることが判明

 ・生物濃縮法とした見方の解析 

 ・リン酸はサンゴ砂から遊離していたものが多いようです。

●実際の養殖水槽の様子、成長状態など:2015年11月14日

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●他の好日性サンゴ(LPS)との違い

 SPS(主にミドリイシ)の仲間は、他のLPS,ソフトコーラルとやや違う性質があり、まず要求される水質や光のハードルがあがります。
水質的には栄養塩の極端に少ない環境を好みます。
そして体質が全体的にデリケートで、共肉がごく薄いためか体力が弱く、好調の時は成長も早く色も綺麗になりますが、
水質面での変化に弱いようです。ひとたび腐食を起こしますと、そこをすぐに折らないと、 大きさにもよりますが数日で全滅をしてしまいます。

 ただ、SPSでもミドリイシ以外のウスコモン、ウネコモンサンゴなどは幾分丈夫で、また栄養塩が増加しても死亡しにくく、当店でも比較的無事に養殖ができています。
また深場系のミドリイシもそれに近いとものが多いようです。

また、特に浅場系ミドリイシに顕著に見られる特性が、水質によって褐虫藻が増えすぎると死ぬ、あるいは褐虫藻に殺されるらしいということです。
 (詳しくは次項で紹介します。) 

 SPS全体では共通して好ましい環境は近いと言えますでしょう。すでに前述しましたように、LPSより比較的強い光、強い水流を好み、また低い栄養塩の水質を好むと言う点
で共通しています。ただ適応幅には差異があり、深場系は浅場系のミドリイシが耐えられるような強い光では、逆に死んでしまうこともあるので注意が必要です。
(ただ、これも慣れがあるらしく、すこしづつ慣らすと強い光でも耐えられるようになる場合もあるようです。)

 また、全体的に刺胞は他のサンゴより弱く、他のサンゴと接触するとだいたいSPSの方がやられてしまいます。また淡水にも大変弱く、水を足す場合に注意し、ヒラムシがつ
いた場合も淡水浴はできませんので、専用薬を用いるか、別容器でパワーヘッドなどの水流をあてて落とすようにしたほうがいいでしょう。

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●飼育方式の検討 

まずSPSだけを重視した飼育方針を

 当方の持論で恐縮ですが、SPSを成功させるなら、まずSPSだけを徹底的に中心に飼育する方法・方針をとった方が良いと考えます。SPSに限らず、多くの飼育のポイントを
考慮しなければならない、いわば容易とは言いがたい海水の生物を飼育するとき、単に一緒に飼いたいから、という理由で主として対象の生体を危険にさらすのはできるだけ
やめたほうがいいでしょう。
 無論一切他の生物を一緒に飼うことはよくないということはなく、例えばサンゴ水槽全般でも、魚は100Lにつき1匹くらいは生物のバランスでむしろ必要になります。

 ただ特にSPSの場合は、水質面で栄養塩をかなり低下させる必要があり、その意味でもエサが必要になり水を汚しやすい魚などの飼育は極力控える事をお薦めします。
 また、そのようにすれば、プロテインスキマーさえ不要になる飼育法も可能であることがわかりました。(後述)

 さしあたり、SPSを飼育するときは他の生き物やシステム、器具をSPS第一に考慮するという方針をお薦めします。

目指すべき水質 

 これは当店および、これまでミドリイシにかなり力を入れてこられたお客様の意見も踏まえての意見ですので、一般論とは少し違うかもしれませんが、ご容赦願います。

 ・栄養塩

 まず栄養塩について、硝酸塩は可能な限り0ppmを目指すと良いと思います。実際、硝酸塩は水槽の中でゴミを巻き上げただけの状態でもわずかに発生しており、また試
薬の精度から、完全に0ppmまではなっていない場合が多いです。硝酸塩は、還元ろ過やわずかな量であれば良質なライブロックで減らすことが可能です。
 
 リン酸塩は、比較する濃度が硝酸塩と違い、もともとの含有量自体が少なく、海水中ではリン酸カルシウムとして多くが沈殿するため、最大でも2ppm程度までにしかならな
いという状態にあります。 ただ、その中でも影響は大きく、SPS飼育ではできるだけ減らした方がいいのですが、ただ、かならずしも0ppmより、0.1ppm前後が栄養として純
粋に必要、また成長の度合いから見て適当と考えております。当店でほぼ0ppmになった時、SPSではあまり外見での急な異変はみられないのですが、ソフトコーラルでは
成長が止まってしまいました。

 ・ミネラル分 

 次に必要なミネラル分については、要求や添加するものは一般のハードコーラルとほぼ同じで、微量成分の他はカルシウム:400〜500ppm、KH:10〜18dH、マグネシウム
:1300〜1600ppm程度の範囲であれば十分に飼育可能であるようです。
 たた種類によって要求が異なるらしく、こちら長崎半島南部 野母崎にも少しミドリイシが自生していますが現地の天然海水のKHは5〜6くらいです。

カルシウムリアクターは用いた方がいい

 微量成分は添加剤を用いるとしまして、特にカルシウム、マグネシウム、KHなど、濃度の比較的高く、濃度の測定の対象となるような成分を維持する方法として、海水の水
換え・添加剤・そしてカルシウムリアクターの使用などの方法がありますが、SPSの場合はカルシウムリアクターを用いたほうがいいと思います。
 水換えや添加剤の使用は補助的に役立つものの、これらだけを主として維持しようとすると、吸収のはげしいSPSで、まして水質の緩衝となるろ材・底砂などがないベル
リン式では水質・濃度の安定を得るのが難しいです。

 余談までに、これは決して当方の活性底面BOXのカルシウムリアクターBOXの使用をお勧めしたいわけではなく、カルシウムリアクターBOXは、実はこういう栄養塩濃度
があまりに低い水質では還元ろ過が起きず、二酸化炭素の発生が少ないため、カルシウムリアクターとしての効果が低下します。当店では、下部で紹介していますが約25
0Lのシステムの約50L程度でSPSを飼育し、カルシウムリアクターBOXを10個分程度を持ちいていますが、カルシウム400〜420、KH11程度が維持できているのみです。
 KH値をもうすこし上昇させたいと思いKH上昇材を用いると、そのうちカルシウムの値が下がってしまうため、今はもう無理にあげないようにしています。 

システムの選択 ベルリン式と通常のろ過との差異

 昨今、よく用いられてきましたベルリン式は、硝酸塩・リン酸塩など栄養塩を減らしやすい点から、SPSの飼育に特化した手法の一つと考えております。

 ただ、実際には種々の底砂を敷かれている場合も多く、これは生物ろ過器と同様の働きを果たしておりますので、本来はこれはベルリン式の特徴をなしえているか、あるい
は純粋にベルリン式といえるのかが、やや不明瞭です。
 昔から当店はトラブルの多さから、総じてベルリン式慎重派、または否定派でした。それでも、リン酸塩を下げる手法でもっとも有効なのがベルリン式であるならば、やむをえ
ないという認識でありましたが、昨今違う飼育方が可能であることも判明してきました。(後述します)
 他、上記でも述べましたが、ベルリン式の場合、ろ材など水質におよぼす緩衝能力(バッファー)が低いため特にカルシウムリアクターは用いた方がいいと思います。

 一時、ベルリン式が流行しはじめた当初、一般の好気ろ過器が”硝酸塩工場”などと言われ、さも悪いもののように言われた傾向もありました。確かに、物理的に大きさ・形の
ある有機物などがろ過器にトラップされたものが分解されて硝酸塩にしやすいという意味では確かに好気ろ過器・物理ろ過が硝酸塩を生み出しやすい場所といえます。
 そういう意味で、ベルリンの特性としては矛盾する言い方ですが、むしろ魚類など水を汚しやすい生き物をある程度飼育する場合でSPSを飼育する場合、ベルリン式の方が
向いているのではないか、という変な言い方ができると思います。
 また魚類が尿として排出するアンモニア自体を好気ろ過で処理しなければならないのはベルリン(ライブロック)でも普通のろ過システムでも同様です。(プロテインスキマー・
エアーレーションがアンモニア・リンを気化させるという噂もあったようで、実際に当方で実験しましたが皆無です。) 

 逆に言えば、そうでなくすべてをSPSを飼育することを最優先にし、極力エサを与えない環境にするのであれば、普通のろ過システムの方がバッファーが効き、安定度・ろ過
能力で有利といえます。あるいはそれにプロテインスキマーを用いた状態で十分にすくなくとも栄養塩の低いSPSの好む水質の維持は可能です。

各飼育方法でのミドリイシ成長試験 

 下の写真は、機関誌BL5号で掲載しておりました3種のOF式によるSPS・他サンゴ飼育における比較実験を行った際のシステムです。一番右がベルリン式になります。
通常は飼育水槽にライブロックを入れますが、このときは実験のため濾過層(ベルリンでは単に水をためるサンプ)にライブロックを収容しています。 

 共通の仕様:水槽サイズ:60*45*45cmOF式、照明:スーパークール115サンホワイト各1灯、循環ポンプ:マキシジェットMP-1200、(水流ポンプ等はなし)
 各システムにカルシウムリアクターBOX*1、人工海水:リーフパワーソルト(旧)

  
                                               ベルリン式のサンプ 右奥に見えるのがスキマーです。


各システムの成長の様子(機関誌5号より抜粋)

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●照明について

・光と褐虫藻と水質の関係

 多くのSPS、特にミドリイシは悪条件ではすぐに死亡しますが、そのほか一旦茶色くなってポリプがよく開き、一見見た目の状態がよくなった直後、一気に組織がはがれて
死ぬ事があります。
 この直接の原因が、褐虫藻が増えすぎたために内側からのなんらかの崩壊を招いているらしいと言う事が、機関誌BL3号に掲載している実験で推測できました。
 SPSは一般のLPSやイソギンチャクと違い褐虫藻を吐き出せず、しかも多量に保持するだけの体積を組織内に持たないため物理的に”破裂”に近い現象が起きているの
ではないかと思われます。
 また、ハナヤサイサンゴ、深場系ミドリイシ、ウスコモンサンゴでは色は汚く茶色くなるものの、死亡まではあまり至らない事が多いです。 

 理想的な飼育環境としては、栄養塩を出来るだけ抑えて、かつ光もミドリイシが殺藻で白化する少し前程度まで強化・調製( 後述します)するのが好ましいと思われますが、
以下の2点のいずれかだけでも重要的に守れば、さしあたりの飼育が可能になる場合が多いです。

 @水質面で栄養塩類を極力抑える

  栄養塩類を極力低く保ち、硝酸塩ほぼ0ppm、リン酸塩0.1ppm以下、ケイ酸塩なども皆無の状態を維持すれば、蛍光灯でも十分に飼育できたという例がよくあります。
 (水槽の深さ45cm程度までで、100Lにつき3波長系ライトで80W程度)
  ダイビングをされている方に伺ったところ、海中にはどうみても水槽でいう蛍光灯のブルーライト程度の照度しかない場所でも健康にミドリイシが育っている事がに確認され
 ています。(もちろん特に深場系ミドリイシではありません)
  この水質を維持するためには、窒素は還元ろ過で、リン酸塩はプロテインスキマーとカルクワッサー添加の併用によって水中のリン酸イオンをリン酸カルシウム化し、それ
 をスキマーで除去できることが確認されています。 また、魚など水を汚す生き物を最低限に抑え、海草を大量に飼育することで特にリン酸塩を除去する方法も有効です。
 当店ではこの方法だけでかつて常時1ppmもあったリン酸塩を0.2-0.3ppm程度に抑えることが出来ました。 
  上記までの記述内容は主に2012年頃までの内容ですが、2014年以降これに加え、本項目の新たな作製時下記で紹介・追記しました手法で、プロテインスキマーも用い
 なくて良い方法も発見しました。

 A(栄養塩が多い場合等に)極度に強い光を与える。

  水質に栄養塩がややあり、硝酸塩についてはまだ確認が取れておりませんがリン酸塩が0.5〜1ppm程度もある環境でも、光が極端に強い環境では褐虫藻が強光阻害
 で”殺藻”され、強い光が直接当っている部分が”白く”なるとともにミドリイシが健康に生き続ける事が確認されています。このときの照度は85000lx〜10万lx程度で、実際
 の照明器具では6500〜10000ケルビンの見た目の色が白系に近い明るいタイプでとにかく集中光型のメタハラで得られる照度(器具1個では)です。
 ただ、大きな個体ではどうしても下部に強い光をあてることができないので下の部分から組織がなくなってくることが多いです。
  この手法は、過去、水質面で栄養塩を低く保てず、とにかくミドリイシがまだまともに飼育できなかった頃に光を極度に強化すると生き延びることを発見したものでした。

 上記、2つの方法の少なくともいどちらかに重点を置いておけば多くのミドリイシをさしあたり死なせずにすむようですが、本来は栄養塩を低く抑え、光を適正な範囲で(下記で
詳細を記述していますが、栄養塩が少ない場合は、光が強すぎると逆に危険です。)調製するようにして、できるだけ双方の条件を揃えるようにしたほうがいいでしょう。

 ※過去の飼育例

 以下は過去2006年頃に、極めて強いスポット型のメタハラで飼育を行った時の例です。当時、水質は硝酸塩はほぼ0ppmでしたが、リン酸塩が1ppm以上もありました。


↑6500k 150Wの超集中光ランプで飼育している状態です。真ん中の極端に明るい部分ができています。

     →    
            2006年3月ごろ                                  7月                  

・SPSへのライトは電球型スポットLEDがおすすめです。

 独自の見解で恐れ入ります。SPSを飼育する際、今となってはメタハラよりも、ずばりLED、特に20W前後の電球型スポットLED(の複数使用)がお薦めです。
(器具の例:アクシーファインスポットLED20W
など)
 波長だけ見れば確かにメタハラの方が有利である点もまだあると思いますが、省エネ、照らしたい所だけを器具とレンズの双方で調節できる効率のよさ、発熱の少なさ、ブ
ルーの発光の得意さ、別に大きな安定器などがなく、本体だけで気軽に設置・使用可能などの利点から、他の照明を選ぶ必要がもはやあまりないと思っております。

 すでに好日性サンゴ飼育ガイドの照明の部分、飼育器具のガイドに詳細な照度測定結果を掲載しておりますので参照願えますと幸いです。

・照明の距離・設置など

 少し端的に使用方法、台数の目安を提示させて頂きます。当店の測定では150Wのメタハラ1台分での水槽底面への照度と、約20Wスポット型LED電球×2個程度がだい
たい拮抗するという結果が出ました。(上記
飼育器具のガイドより)
 ごく大雑把に考えますと、100Lの水槽で水質が良好であったとして、普通150Wメタハラが一台あればさしあたり飼育は可能ですので、20WのLED電球が2灯あればほ
ぼ足りる計算です。ただ、例えばもし10cmくらいまでのSPSを1個だけ飼育するだけなら、それに直接照射するようにすればLED電球1灯でも事足ります。
 実際にはアップグレードとして、全体的にもう少し強化するとなお良好な成長、色あげが望めるようです。

 あと、設置する高さ・距離について、これは各ランプの照射角度、実際の照度との兼ね合いになります。また、各種や上記のように栄養塩が多いときは強い光に耐えら
れる傾向があり、これら水質にもよりますが、水質に栄養塩が少なくSPSに向いている状態で、サンゴにあたる照度がだいたい2〜4万ルクス(空中で測定した同じ距離の照
度)くらいが良いようです。サンゴの色の変化を見ながら、急激に色が薄くなって白化しているようなら遠ざけるなど、調製する必要があります。

 ご参考までに当店が何度も調製してやっと頃合としましたほぼ水槽の全体にSPSを飼育している養殖水槽の例を下に紹介します。

   
60*45*20cm水槽にR.P.LED21Wを6台用いています。いわば150Wメタハラを3台くらい用いているかなり強いパワーです。
R.P.LEDは照射角度約60度の器具で、水中と空中あわせてサンゴから40cm前後くらいの距離で照射しています。
写真中央のようにライトの向きを変えて、空中でほぼ同じ距離で照度計で測定したところ場所により20000〜30000lxくらいの照度(明るさ)になっていました。
※実際の照度の値は照度計の表示数×10の値です。
この水槽は成長を促し、水槽全面に強く照射するため、特別強く照明していますが、普通に飼育するだけならこの半分くらいの使用数でも十分です。

・必要数の目安

 あくまでまったくの目安ですが、各水槽でアクシーファインスポットLED20Wなど、20WレベルのスポットLED電球を用いてSPSを飼育する際の必要台数をお知らせします。

水槽の大きさ

20WLEDスポット電球の必要個数

150Wメタハラの照度で換算した数

60*30*36cm

2個

1台

60*45*45cm

3〜4個

1台

90*45*45cm

4〜6個

2台

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●適正な水流

 SPSへの水流は許容範囲は全体的に広く、LPSよりもやや強い水流があった方がよいです。ただ、開いたポリプが軽くゆれていれば十分で、強すぎはよくありません。実際
に用いるポンプパワーのごく大雑把な目安では、水量100Lにつき、毎分10〜15L程度のポンプまたは放水があれば十分と思います。ただ同じ流量の水でも、放出される方向
や吐出口の口径でできる水流の強さが全くかわってきます。

・水流用パワーヘッド と 普通のパワーヘッドの違い

 用いる水流源としては、ろ過システムからのポンプの注水の他、パワーヘッド、また水流専用のパワーヘッドもあります。当店も現時点で販売はしておりませんが以前から数
点所有して使用しております。
 これらは水流専用で、特に複雑な水流がつくれる店でとても有効なものではありますが、一つ留意しておきたいことがあります。
これらは低いW数で普通のポンプよりはるかに大きな流量が表示されており、実際、それだけの水量を動かしてはおります。
 ただ、これらが発生させる水流は基本的に多方向に拡散するものがほとんどであるため、主にポンプ前方の広い角度の一定範囲には複雑でとても強い流れを発生させま
すが、大きな水槽で遠距離まで通るような、あるいは水槽全体に太い流れを作る場合は、少なくとも同じ消費電力では普通の(放水口径の小さい)パワーヘッドの方が適し
ています。
 ただ、水流を好むSPSの水槽でもた例えば、60〜120cmの水槽で、それぞれ毎分5〜20Lのポンプが1個ついていれば普通は十分です。
最近は鬼のように水槽内に何個も水流ポンプをつけている方もおられますが、実際、そこまでは不要だと思います。
 当店では60*45*20(H)の養殖水槽で、せいぜい毎分6〜8Lの普通のポンプか、この倍程度の水流専用ポンプ1台で十分です。
 下は、当店での使用例です。(水色の矢印が、水流方向目安です。)

   
(左)水流用ポンプの起こす複雑な水流使用例(セイオ) 60*45*20cmのSPS増殖水槽です。これ一台で水槽中の水流は十分で、強すぎる部分もあります。
 (右)通常のポンプ(RIO180毎分7.6L、直管のノズル使用)使用例 水槽サイズ120*45*15cm 一台で水槽前方は端から端まで十分な水流が起きています。

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●同じ水槽で飼育する他の生物

 SPSは極端に栄養塩の少ない水質を好みます。そのため、栄養塩を増やしやすい生き物、数を抑えること、また逆に稀ながら栄養塩が多くないと飼育が難しい生き物もあり
、これらとの飼育は向きません。以下に、各グループについての当店なりの見解をご紹介します。 

 ・LPS

  LPSは、当店での見解では、硝酸塩は少ない方が好ましいですが、リン酸塩はむしろ海水での限界値である約2ppm程度までなら、存在したほうが状態が良いと言う結
 論に達しております。ただ、それでも低い濃度でも飼育自体はできる種が多いため、概ね一緒の飼育が可能です。
  ただ、ミズタマサンゴ(バブルコーラル)、また近縁のオオハナサンゴ(パールコーラル)はリン酸塩が多くないと飼育が難しいため、これだけは避けておいた方がいいでし
 ょう。最初は元気でも、数週間でやせてしまいます。

 ・ソフトコーラル

  こちらも、極端に栄養塩が少ない状態では成長や状態が悪くなりますが、飼育自体は概ね可能です。ただ、チヂミトサカなどはあまりに栄養塩が少ないとポリプが開かなく
 なり、成長も悪くなるようでした。

 ・魚 

  エサを与える必要がある以上、魚の同居は極端に控えた方が良いです。ただ、SPSはLPSと違い、魚の遊泳などによる物理的ショックにはあまり影響されず、そういう意味
 では丈夫です。
  水質面が強力なプロテインスキマーなど別の補強要素で維持できるのであれば、LPSよりむしろ魚との同居に向いているとさえ言えます。

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●その他のポイント

・水量は多い方が良い。

 ミドリイシやSPSを9年くらい前から断続的に失敗の繰り返しで飼育して来た中で、漠然ながら、水量だけは多い方が良いという印象があります。
最低でも100L以上は欲しいところです。昔、60cm規格水槽で添加剤の試験などを行っていた際、水質などにもよるのだと思われますが、なかなかうまく飼育できなかったこ
とが多かったです。
 50L水槽でもうまく飼育されている方もあり、決して一概にはいえないのですが、当店では水量が多いシステムほど、急な死亡などは少なかったように思います。 


ハードドレースの試験ページからの流用で恐れ入ります。60cm規格水槽で飼育していた時のものです。
この時は一応、数ヶ月は飼育できましたが、中には死亡するものもしばしばあり、水質変動による影響が懸念されました。

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●当店流の飼育方法の紹介・プロテインスキマーなしで飼育する方法

・プロテインスキマーを用いなくてもリン酸をごく低濃度にできることが判明

 当店が2010年の機関誌BL6号で掲載しておりましたSPSの試験飼育水槽(上の写真)で、以下の概念のもとになる”生物に水中の栄養塩濃縮する”方法で飼育したことを
初めて、掲載しておりました。(上記水槽ではまだプロテインスキマーを用いていました。)
 後、2013〜2014年に養殖サンゴ水槽、SPS養殖水槽などの運転でこの概念で今一度実際に運転し、実質的にプロテインスキマーを使わずに低い栄養塩(特にリン酸塩)の
飼育が可能にが不要になるという結果が出ましたため、報告させて頂きます。

 プロテインスキマーが不要になると申しましたが、魚をある程度飼育し、エサも相当量与えるとなれば絶対にリン酸塩も硝酸塩も増えますので、その状態ではプロテインスキマ
ーは飼育方式を問わずまず必要になります。
 ただ、あくまでSPS・水質最優先で他の生き物の数や種類をすべてそのために向けたセッティングを行えば、結果的にプロテインスキマーや吸着材等を一切用いずにリン酸
塩濃度を0.1ppm以下にまでできることがわかりました。
 これはまったく、以前までは私自身も予想できず、特にサンゴ砂を多量に用いては不可能と考えておりましたが(機関誌BL6号の上記写真水槽では、ピュアホワイトサンドと
いう、サンゴ砂ではない砂を用いていました。)2013年以降、自社の養殖サンゴ水槽を運転・試験していて初めて確実にわかったことです。ゆえに、これまでの記述と相違があ
りますこと、お詫びいたしますとともに、どうかご容赦のほど御願いできますと幸いです。

 改めまして当店では2013年3月〜2014年4月現在、養殖ソフトコーラルの合計1300L水槽,養殖SPS合計約250Lのシステムでプロテインスキマーを一切用いていません。
にも関わらず、リン酸塩は0.1ppm程度、またそれ以下を維持しています。※念のため、テスターはセラ製とレッドシー製双方を用いています。
 ろ過方式は双方、サンゴ砂を用いた普通のウエットろ過、または底面フィルター型のもっとも原始的なOF式ろ過です。沈殿物やいわゆるヘドロも結構多く、見た目もとても綺
麗な状態とは言えません。
 魚はサンゴを害するヨコエビを牽制し、コケを除去するため、フタイロカエルウオ、ヤエヤマギンポなどを各水槽に0〜1匹だけ収容し、給餌は、双方のシステムで1日1回、0.1
〜0.2g前後づつです。養殖ソフトコーラル水槽は、以前はエサを与えておりませんでしたが、試薬上でリン酸塩がほぼ0ppmになってしまって状態がやや悪化、成長が鈍化した
ため、あえて少しだけ給餌を行うようにしました。その結果、いまのように僅かに発生している状態です。

 活性底面BOX(カルシウムリアクターBOX)はかなり大きなものを用いていますが、これにはリン酸を低下させる能力は基本的にありませんので、直接の関係はないと思わ
れます。(ただ、カルシウムを溶出させていることが、結果的にリン酸カルシウム化させて沈殿させているという作用はあるかもしれません。)
 添加剤は自社のソフトトレースと、KHの状況でKH+だけを投入しています。一度、カルシウムの値が低下していたので、塩化カルシウム・マグネシウム等を投入したことが
あります。 

                  
(左)2014年1月12日頃測定 
  給餌を全くしなかった時期に測定したものです。(セラテスター)この時点ではリン酸塩はほぼ0ppmで、ソフトコーラルの成長が悪くなっていました。  
(中)同年4月1日の測定
  上記以降、双方の水槽でほぼ毎日0.2g程度の給餌を行うようにしました。そのため、多少リン酸が発生しています。(赤い破線の○が、同じ水槽です。)
  画像では若干試薬の色が濃くうつっており、実際にはSPS水槽が0-0.1ppm、養殖サンゴ水槽が0.1ppm程度でした。
(右)リン酸塩が少ないことの一つの現象として、水槽中に石灰藻がとてもよく生えます。デスロックや活性底面BOXがライブロックになっていきます。(笑)

・生物濃縮法とした見方の解析 

 上記のような水質がなぜ実現したか種々、推測をしてみました。

 生物はサンゴの他、コケ取り貝や、魚類もわずかに飼育しておりますが、それらにほぼほとんどエサを与えずに飼育できる環境を作り上げて、結果的に水中の栄養塩をこ
れらの動物の体内に濃縮することで、水中から取り除かれているのだと思われます。ただ、魚類を給餌せずに飼育するためには、エサが発生・繁殖するようにセットする必要
があり、それは可能です。主に二つのエサがあり、藻類を食べる生き物ではまずそれが、そしてヨコエビなどの微小動物を繁殖させることができれば、それもエサになります。
 そこで有効に働くのが、底砂や底面フィルターのろ材として用いている10番程度のサンゴ砂で、この砂がヨコエビ等、多数の微小動物の住みかとなり、繁殖することができ
ます。砂が無いとほとんど繁殖してくれません。また細かすぎても数は激減します。大きな砂でも増殖しますが、繁殖する生物種類が単純化、数が減り、主にヨコエビとウミケ
ムシが多くなるようです。(ただ、エサをほとんど与えない水槽ではウミケムシはあまり増えません。)
 
 また当店の養殖サンゴの水槽には大量にソフトコーラルを飼育しており、これらはリン酸を僅かずつ吸収しますので、その作用も大きいと思います。
 そのため、実際にSPSを飼育する場合、リン酸の吸収体としてSPSと一緒に飼育するのも一つの方法だと思います。
いずれにしても、エサをたべる生き物を飼育し、かつ給餌せずに水槽内で発生するものだけで飼育できる状態を作り出せば、栄養塩は自然の生体に蓄積し、水中から取り除
かれるようになります。

 あるいは、そこまで複雑に考えなくても、単に極力エサを与えないような状況を作り、水を汚さないようにサンゴの成長を促せば自然にそうなるのかもしれません。

 結果、上記の水質を満たすためなら、リン酸については、ろ過器は結局普通に10番砂サンゴ砂を用いた底面フィルターで実現可能となり、わずかに発生する硝酸塩について
は、ライブロック・還元ろ過で処理可能ということになります。

・リン酸はサンゴ砂から遊離していたものが多いようです。

 そもそも当店は過去、リン酸塩が低い水槽はできなかったのですが、最近そういう水槽ができやすくなったことに、過去用いていた砂に多量にリンが付着していた可能性
があると推測しています。
 水槽内でのリン酸塩の発生源で、魚を飼育している中でのエサや糞など以外に、サンゴ砂自体から溶出または剥離してきているものがあります。
リン酸塩は、リン酸カルシウムとしてサンゴ砂の表面に最初から付着しており、水槽で使うだけで普通はリン酸が出てきます。また、エサや魚が多い水槽で長い間用いたサン
ゴ砂にも、同じ理由で多量に付着しており、それが新しい環境などで一旦また遊離してしまい、濃度を上げるようです。
 ただこれは、再度定着して濃度が下がる場合が多く、この間、濃度にもよりますが当方の過去の記憶では一ヶ月くらいがかかりました。 
 
 私自身がリン酸を測定するようになったのが店を始めて数年経過してからですが、 昔、リン酸塩が低い水槽はほとんどありませんでした。この理由は、サンゴ砂が素人時代
から長年色々な水槽で用いてきたもので、表面に大量のリン酸カルシウムが付着していたのではないかと推測しております。ただ、当時はSPSは飼育しておらず、LPSやソ
フトコーラルにはかえって好都合でしたので、石灰藻は生えませんでしたが特に不都合はありませんでした。
 昨今、新しいサンゴ砂を用いることが多くなったため、以前ほどリン酸が付着したサンゴ砂を使わなくなっているのも、低い値を実現しやすい一因かもしれないと思っており
ます。 

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●実際の養殖水槽の様子、成長状態など (2015年11月改定) 

  → システムの概要は、当店サンゴ養殖室のご紹介 に掲載しています。

●SPS養殖水槽 (2015年11月改定) 

 2013年の試験養殖開始以後、数度の水槽の改良、移動などを経て、現在では養殖ソフトコーラル等と同じ水質で養殖、育成を行っています。

・2015年10-11月現在の様子

  
(左)全体 (中)左側がハナバチ系ミドリイシ、右側が不明種のフトエダ系?ミドリイシ    (右)左から植えつけ一ヶ月程度のハナガサ系ミドリイシ、ツツ系ミドリイシ   

・成長の状態

 以下のSPSは、2013年6月頃から、最初は現在の養殖ソフトコーラル水槽(1300L)で飼育し、2014年1月以降はSPS専用水槽(250L)で飼育、2015年は

 再度、養殖ソフトコーラル水槽(水量1600L)で育成しています。

    
ウスコモンサンゴ (※すみません。ウネコモンサンゴかもしれません。)

養殖ミドリイシの成長の様子

  
 2013年12月頃                    2014年4月                       2015年9月

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